クリスマスは世界中の多くの国で定着した大きな年中行事ですが、イエス・キリストの降誕を祝うキリスト教のお祭りで主にキリスト教のイベントとして知られています。
では、イスラム教徒が主要な人口を占める国では、クリスマスはどう受け止められているのでしょうか?
この記事では、エジプトを例にして説明します。
エジプトの人口と宗教的背景
エジプトはアラブ世界の最大国であり、大多数はイスラム教を宗教としていますが実は人口の約10%がキリスト教のコプト教徒です。
エジプトはイスラム教の国というイメージが強いですが、キリスト教のコミュニティも古くから存在しています。
クリスマスはキリスト教に根ざしているので、一見するとイスラム教徒には無関係に思えるかもしれませんが、エジプトは厳格なイスラム社会ではないので、大多数のイスラム教にとっても日本の様にクリスマスはお祝いというよりも楽しい「イベントの一つ」という位置付けです。
エジプトにおけるクリスマスの様子
12月頃からホテル・ショッピングモールなどでクリスマスツリーやデコレーションが飾られる様になり、観光客向けという側面もありますが、近年では見事な装飾が並び写真スポットにもなっています。
筆者が住むダハブでもあちらこちらでクリスマスの装飾がありイスラム教の人々もクリスマスの雰囲気を共有し、体験します。
幼稚園や学校、子供向けに開かれたワークショップなどでクリスマスにちなんだ物を作成したりすることはエジプトでは一般的です。
厳密にいうとコプト暦がユリウス暦に基づいているため、コプト教のクリスマスは12月25日ではなく1月7日です。
エジプトで1月7日は祝日、1月1日は平日です。
イスラム教でもイエスは預言者のひとり
イスラム教ではイエスは「イーサー」と呼ばれています。
イスラム教においても、イーサーは重要な預言者の一人とされておりコーランにもその名が頻繁に登場します
キリスト教ではイエスは神の子であり、神と同一の存在であるとされていますが、イスラム教ではイエス(イーサー)はあくまでも神の預言者の一人であり、神とは異なる存在であるとされています。
上記の通りキリスト教とイスラム教ではイエスに対する見解に違いがあることからも、イスラム教徒の中にはクリスマスはイスラム教の教義とは相容れないと考える人もいます。
クリスマスに反感を持つイスラム教徒もいる?
一般的に、イスラム教では他の宗教の祭典を祝うことは推奨されていません。
いわゆるハラーム(禁止行為)という人やそう感じる人もいます。
前述の通りエジプト社会においてクリスマスは年中行事の一つとして認知を得ていますが、イスラム教徒一人ひとりの考え方や感じ方は異なり、同じイスラムでも国や地域が変わればクリスマスに対する捉え方も多様であるということです。
クリスマスに反感を持つ理由として、
- 宗教的な理由:イスラム教は唯一神アッラーを信仰する宗教であり、他の宗教の祭典を祝うことは教義上推奨されていません。クリスマスはキリスト教のイエス・キリストの降誕を祝う行事であるため、イスラム教徒の中には抵抗を感じる人がいます。
- 文化的・政治的な理由:近年グローバル化が進み、様々な文化が混ざり合う中で、自身の文化的アイデンティティを強く意識する人が増えています。クリスマスが西洋の文化を代表する行事として認識されている場合、イスラム教徒の中には西洋文化の流入に警戒感を持つ人もいます。
おわりに
イスラム教徒といっても皆が同じ一つの考えではなく様々です。
エジプトでは元々コプト教(キリスト教)のコミュニティが存在していること、観光客が多いこともあってクリスマスは日本の様に社会的なイベントとして共有されています。
これは互いの文化を守り認め合う素晴らしい例ではないでしょうか。
子供にプレゼントを渡すとかサンタを信じるとかは無く、それとこれとは別で雰囲気を楽しむという感じです。